“Save the 下北沢” 専門家インタビュー Save the 下北沢のTOPページへ

「補助54号線」は、はたして必要なのだろうか?
交通経済の専門家・堀江照彦さんに伺う


1.道路の必要性を決めるもの

――今日は、交通経済の専門家でいらっしゃいます堀江照彦さんに、現在下北沢地域に計画されている「補助54号線」についてお伺いしたいと思います。この計画は世田谷区が発表しているのですが、なぜこの道路が作られようとしているのかということが、具体的によくわからないままでいます。今回の堀江さんへのインタビューを通して、少しでもこの「54号線」計画について、考えていけたらと思います。堀江さん、よろしくお願いします。
では、さっそく質問に入らせていただきます。まず、とても基本的な質問なのですが、そもそも道路というのはどのような場合に作られるのでしょうか?

堀江:道路を作る一番の理由は、自動車を通すためです。そのため、道路を新しく作るときには、その道路に対する需要がはたしてあるのかどうか、ということをまずは確認しなければなりません。この確認作業をするのが一般的なやり方です。それは日本だけじゃなくて、世界中どこでも、特に途上国で新しい道路を作る場合にはそうです。

――なるほど。そうしますと、「自動車交通量」こそが、新たな道路を作るか作らないかを決定するべきであるということですね。

堀江:そうです。けれども今の日本では、役所が決めたからとか、東京都が決めたからとか、そういうことがいつの間にか道路建設の第一の理由に挙げられてしまっている。アプローチの仕方が、世界的に一般的な道路建設のケースとぜんぜん違うんですよ。

2.下北沢の道路計画における行政の調査不足

――今回、世田谷区は下北沢地域に新たに道路を作ろうとしている訳ですが、下北沢地域の道路の必要性に関する調査は、どのように行なわれているのですか?

堀江:平成11年にトーニチコンサルタント(以下、トーニチと略記)という企業が、(世田谷区から委託されて)まとめた調査があります。その調査の中に、「自動車OD表」というものがあるんですね。「自動車OD表」というのは、ある地域をゾーンに分割して、一つのゾーンから他のゾーンへ自動車がどれくらいの量移動したのか、というのをまとめた調査表なんです。トーニチは、下北沢の道路網にその表を適用した調査を行なっています。その調査によると、仮に54号線を通した場合、そこを一日に通る車の量は、平成11年時点の交通量で平均して7500台だそうです。
しかし、トーニチと区の調査はそこまでしかやっていないのですよ。例えば、トーニチの調査は平成11年だけど、例えば平成30年になったらそれは何台になるのか、などといった調査をやっていないし、世田谷区も一日に7500台という結果を使ってそれ以上はなにも分析していない。「54号線」は2車線の道路として計画されているけれど、2車線の道路のキャパシティも調べていない。

――なるほど。「54号線」には7500台の車が通るだろう、ということを示しただけで、行政はそれ以上の調査を行なっていないわけですね。

堀江:そうです。

――先ほど道路の必要性は、自動車交通量によって決定されるという風にお伺いしましたが、下北沢に「54号線」を作る必要性がない、と堀江さんがお考えになるのはなぜですか? 7500台の車は、「54号線」を作らなくても、現在ある茶沢通りと鎌倉通りなどの道路によってさばけてしまうだろう、とお考えだからですか?

堀江:その通りです。井の頭通りが今度4車線になるでしょ? 新たに道路を作らなくても、周りにある道路のキャパシティにまだ余裕がある、と見られるわけです。

3.“Save the 下北沢”の実施した交通量調査について

――それでは交通量調査のお話をお伺いしたいのですが、今回の“Save the 下北沢”の調査は、どのような目的で行なわれたのでしょうか?

堀江:下北沢の交通量が、増えているのか減っているのかを見ようとしたのです。結果的にいうと、下北沢の交通量は、過去のデータと比較して、横ばいか、やや減少の傾向にあるということがわかりました。(詳しくは、「都市計画道路補助54号線計画の交通量推計と費用便益分析」(要約版)[PDFファイル:996KB] を参照してください。)

――下北沢地域では車の使用量は急激に増えてはいないということですね。

堀江:そう、むしろやや減少傾向にあった、ということです。これははっきり言えることだと思います。

――そのような地域に道路を作るということは、あまりないのですか?

堀江:そうですね。強いて道路を作るという必要はないと思いますね。

――なるほど。

4.行政はなぜ、「54号線」の道路計画を推進しているのか?

――トーニチの調査結果を、行政はどのように道路計画に生かしているのですか?

堀江:ぜんぜんしていないよ。「このあと何をやるのですか?」と区に聞いたら「これで終わりです」と言っていた。

――じゃあ何のために作るのでしょうね?

堀江:税金の無駄遣いですよ、はっきり言って。もしも本当に投資効果があるというのならやればいいけれど……。

――「交通量調査をして、費用便益分析をして、その上で道路を作る必要が本当にあるのかを検討してから道路計画を作る」という本来のやり方によっては現在持ち上がっている道路計画は動いていない、ということですね。
本来あるべき道路計画のイロハに従わない「54号線」計画を、なぜ行政は優先的に進めようとしているのでしょう?

堀江:うーん。この「54号線」計画は、なぜやるのか理解が出来ないんですよ……。

――そうですか。となるとこれは、道路計画の必要性があるから動いてきた計画ではない、という風にも言えるのでしょうか?

堀江:そうですね。

――区はなぜそこまでこの計画に固執するのでしょう?

堀江:うーん。僕もそれはわかりませんね。井の頭通りを4車線に拡幅しているから、54号はいらないと思うのですが……。

――あえて「54号線」を通すメリットは、どこにもないのでしょうか? 例えば渋谷から環状7号線へ抜ける道が出来ると便利だということなど、考えられることはあるように思うのですが。

堀江:渋谷からの通り道は淡島通りや井の頭通りがあるから、それらの道路のキャパシティがまだ一杯ではないのだから、必要ないです。また、人口が減り、老齢化して、少子化、となると、交通量はもっともっと減るんじゃないでしょうか。だからもし道路を作るとなると、代替案をもっと検討するべきだろうね。バスや鉄道の新しい使い方の検討もすべきだと思うし。道路はこれ以上作らない、という方向に進む方がよいと思いますね。税収にそんな余裕はない筈です。

――本日は、いろいろなお話が伺えて、非常に参考になりました。どうもありがとうございました。

※堀江さんがまとめられた「都市計画道路補助54号線計画の交通量推計と費用便益分析」(要約版)[PDFファイル:996KB] は署名が1万を超えた際の経過報告とともに、行政に提出しました。

 

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